『The Brotherhood of the Bell』 (1970年、米)  下記は、最初に1958年に小説からテレビ化され、1970年にリメイクされたハリウッド製テレビ映画のあらすじです。映画のメッセージを簡単に言うと「米国には上流社会だけの秘密結社が在って、政治権力にも入り込み、彼らの上流生活を維持する為に密かに非合法な事を含む利己的行為を続けている」です。この手の映画の古典とされ、70年の英語版ならパブリックドメインにあります(フリーでネット公開されています)。 1970年版『ベルの同胞会』あらすじ(全ネタバレ)  22年前にベル秘密結社の入会儀式を受けた前途有望な中年のP教授が、結社の過去を調べていた若き学者Dを結社員にするための後見人に任命され、40年前に儀式を受けて結社員となった上役=自分の後見人ともう一人の結社員と共に4人でDの入会儀式を行い、最後に鐘(ベル)を鳴らす。  P教授は結社からの新たな使命を受ける。それはかつて共産圏の国から亡命してきた友人の教授に学部長の席を辞退しないと母国に正体をバラした書類を送るぞと脅迫することである。友人を脅したくないP教授は、しかし結社の上役に説得されてそれを実行する。その夜、友人の教授は自殺してしまう。  P教授は最後に友人に会った人物として警察の聴取を受ける。P教授から事情を聞いた妻は彼女の父に会えと言い、彼女の父の勧めで連邦捜査局のエージェントに会い、脅迫の為に使った書類を渡すが、実は偽者の捜査局員である。妻の父はP教授が精神病だと本物の捜査局員に言い、彼は大学の職を失い、教職不可のブラックリストに載せられる。  P教授は事実を暴露する記者会見を開くが、友人だと信じていた結社の上役や妻の父は会見内容を否定し、恐らく結社員の検事は調査を却下する。P教授の父親が経営する建設会社は突然の当局監査を受けて倒産し、高齢の父はショックと怒りで卒中となり危篤になる。P教授が父の入院する病院に居る間に家に侵入者があり、恐怖のあまり妻は隣人と気づかず発砲するが、弾は外れる。P教授は妻を咎め、一連の出来事で精神的に追い詰められた最愛の妻は彼の元を去る。直後に病院から父が死亡したと電話がある。  P教授は彼の就職・結婚・成功が全て秘密結社によるものだったと気づく。P教授は結社を告発するためローカルTVのショーに出演するが、他の2人のゲストが彼の話を粉飾して絵空事にし、司会者は彼を過激派呼ばわりして挑発、司会者に掴み掛かったP教授は警察に勾留される。番組の背後には結社が居るのか?  彼は思いがけなく、友人の(彼を陥れた結社の一員だと信じて、軽蔑していた)教授に警察から請け出され、励まされ、結社で後見人となった新結社員Dが結社の過去を調べていた事を思い出して会いに行く。事情を聞いた新結社員Dは彼と共に秘密結社の正体を暴くことを手伝うのであろうか? 解説  赤狩り・・・米国で1950年にマッカーシー上院議員が始め、彼が失脚する1954年まで続いた政府による共産主義者排除運動(実際はベトナム戦争までその余波が続いた)。  赤狩り当時、米国の共産主義の旗頭であったユダヤ系の多くがターゲットとされ、大半がユダヤ系であるハリウッドにも影響が及びました(注1)。そういう余韻の中で1958年版が作られました。その後ベトナム戦争が始められ、泥沼化し、米国内で“正義の米軍”の実態が報道されていた70年に、時代の雰囲気に後押しされてリメイクされたわけです。  で、思うのですが、ユダヤ系が米国のWASP(白人アングロサクソン・プロテスタント)社会を批判する目的で作られたと思われるこの作品って、逆に彼らが内情を良く知っている“シオニスト結社”の実態そのものから考えられたのじゃないのかなぁ?  (面白いのは、劇中のテレビ番組で“エセ陰謀論”として扱うのが“白人による黒人への陰謀”と“国際ユダヤの陰謀”で、どっちも“物凄く実在”ですよネ(^^;)。また、対立する出演者を討論させて、怒らせて、時には(ヤラセじゃない?)乱闘になるという米国(カナダ?)の人気トークTV番組が在ったのですが、このドラマより後だったかナ?)  この映画の秘密結社の手口・・・事実をばらそうとした人物を、まず周囲の人物を使って精神病だとしていまい、同時に裏から手を回して彼の一族郎党を法的・経済的に封じ込める。更に、話を信じて疑いを持つ人が出ないように、逆にメディアがその人の話を粉飾して全く在り得ないネタをまぜて絵空事にしてしまい、精神的に追い込んで暴力や不正行為を誘発し、逮捕させる。  実際に確定的な悪の証拠を握られていたら“殺す”のでしょうが、この映画の場合は、証拠は既に取り上げており、長年の身内であり、不審な死者が連続すれば当局も疑うということで、上記の様な手口になるのでしょう。まあ、最初に殺しちゃったら、こういうドラマにならないから(^^;)。  実世界でそういう手口を全部含めて可能なグループは、やはりその国の全国レベルの・・・、または“国際的な秘密結社”とか。 注1.H・G・ウェルズが書いたフリーメーソンの予定表とされる『The Shape of    Things to Come:〜』には、“ユダヤ人が迫害される”という部分があるので    “赤狩り”みたいな事はフリーメーソンのシナリオどおりかも